ならのき日記

スロバキアで版画と絵本の制作の日々と、散歩の日記

エゲルのミナレット 

7月の末、取材の旅で宿泊したハンガリーの町エゲルは、城址があり教会堂があり、古い建物や、長い長い地下道が残る、歴史を感じさせる町でした。

その昔トルコに攻められ、一度は撃退したものの、その後の攻撃で開城を余儀なくされました。
約100年ほどトルコの支配が続き、今も古いミナレットが一つだけ残っています。

 

ミナレット”という文字を見た時、聞いたことがあるけど、一体なんだったけ・・・と

暑さぼんやりした頭で思い起こそうとしましたが、出てこず。

実物を見て、あっそうだ、イスラム教の寺院の塔だったと思い出して、すっきり。

 

高さ40m、内部の階段は97段とのこと。

年を取るとともに、なぜか高いところが苦手になってきたのですが、子供たちと共についテラスまで登ってしまいました。
高所恐怖症の夫は、地上で待機を宣言。

 

細い塔の中は、狭く急こう配で、且つすり減ってすべすべつるつるの石の螺旋階段が続いていました。

降りるときが思いやられると思いつつ登ってしまうのは、旅のテンションのなせる業と言えましょう。

 

階段は電灯で照らされていましたが、昔はどうしてたんだろう、という疑問が頭に浮かびました。
とても小さい窓がほんの数か所あるものの、窓が無いところは、真っ暗になること間違いなし。

この急勾配を蠟燭を手に登った? それとも真っ暗闇の中を?

 

登り切って出たテラスは非常に狭く、真下を見るのは更に恐ろしく、息子などは、直訳すると「〇〇〇漏らす!」というスロバキア語常套句(肝を潰した様子を表します)を叫んでいました。高いところが苦手なんですね・・・。
私も、真下なぞ覗きこんでしまった日には、足がへにゃへにゃになってしまいそう。
その反対に、息子の友人のM君は平気なご様子。
「高いところ、大丈夫なんだねー」というと、余裕しゃくしゃくの笑顔で応えてくれました。

どきどきしながらテラスを一巡し、さあ帰ろうと塔の中にはいると、立ったままでは、とても降りられそうもない階段が目に飛び込んできました。

 

 

毎日これを上り下りした人は(確かイスラム教は毎日5回祈るのではなかったっけ・・)、大変な身体能力が身につくだろうなあと思いながら、まだ下につかない!と叫ぶ子供たちの声を聴きつつ、一段一段階段に腰を掛け、そろりそろりと下っていきました。

 

地上にたどり着いたのち、ふと腕を見ると、ひじに擦り傷ができていました。

階段を下りている最中は、痛みを感じる余裕などなかったようで、まったく気づきませんでした。

後になって、りっぱなかさぶたに。

 

昔は占領の象徴、今は観光資源のミナレット
時を経るということの有難さ、みたいなものを思いました。