ノントクシック銅版画のハードグランド
ノントクシック(無毒性)銅版画をやり始めて、7、8年くらい?になるでしょうか。
従来の銅版画のテクニックは、有機系の溶剤(シンナーの類)やアスファルトを使用するので、残念ながら環境や体に優しくないものです。
ただやはり、従来の銅版画の長年かけて確立されたテクニックは、堅牢だなあと思います。大学でみっちり学んだこともあり、私の場合やりやすさの軍配は間違いなく、昔のテクニックに上がります。
ちょっと前にニュージーランドの版画工房のサイトを拝見して、そこに載っていたリキッドハードグランド(防蝕剤)レシピを試してみました。
材料がめっちゃくちゃ値上がっていて、泣けましたが・・・・。
おお、以前のノントクシックハードグランドより描きやすい!ということが判明。 もうちょっと塗り方や、配合を調整すれば、もっと描きやすくなりそうな気配がします。
まったく同じ材料をそろえることができなかったので、調整は不可欠という予測はしていたものの、これくらいの描きやすさが実現するとは、嬉しい限りです。
腐食後も、線が壊れていたりすることもなく、きっちり防蝕してくれました。
下の写真は、テストプレートで新しいグランドを試した後に、描画を始めた版です。
版画を描き続けたい気持ちと、ノントクシックに切り替えたことでの描画の困難さが、ずっとくすぶっていたので、一筋の光明がさしたようです。
なんのことはない、単純にわーい嬉しいな、という気持ちです。
スロバキアでもノントクシックも浸透していけばいいなあと思いました。
従来のテクニックは否定しないけれど、選択肢があるといいなあと。
私がスロバキアの美大に留学したころは、腐食室(銅版の腐食にあたって硝酸を使用する場合、有毒ガスが発生するので換気ができる別室を使用します)すら大学には存在せず、廊下やアトリエでみんな銅版を硝酸で腐食していて、おったまげたものです。
うーん、ワイルド。
さすがに今はちゃんと腐食室も存在していますが。
ノントクシックに挑戦する方がいらっしゃれば、ニュージーランドの工房サイトもぜひご参考にしてください。
https://nontoxic-printmaking.co.nz/acrylic-resist-etching/
出来上がったリキッドハードグランドは、洗濯機から出る排水のような微妙な色合いですが(もともとのレシピと違う材料を使用した為)、使用感は、私が試した中で一番使いやすいと思いました。
ちなみに上の写真は、意味もなくベランダからの朝焼け写真です。
それとも光明が差したっていうのと、関係があるかしら。
最近は霧や曇りの日が多いので、たまに晴れると、なんだかそれだけでラッキーな気分になります。