ならのき日記

スロバキアで版画と絵本の制作の日々と、散歩の日記

ウクライナといえば。

 

昼飯の最中、夫が昨晩見たという映画の話をし始める。

ウクライナの東部の紛争地帯の話だ。

話が怖くて暗くて、ご飯の味が分からなくなる。

隣の国で、戦争があるということ。 隣の国だとしても、そのリアリティを想像することは難しい。 

戦争についての情報は私の頭の中にあっても、それを体験するということとは、ものすごい差があるんだろうということぐらいしか、分からない。

 

何年か前に、ビザの更新をする日本人の通訳を頼まれ、外国人警察署に出向いた折に、クリミア半島からやってきたウクライナ人と話をする機会があった。
ロシアとの併合後のことだ。

警察との交渉がうまくいかず、うんざりしていたところに、大変だったね、何か飲む?、と自分の水筒からお茶を勧めてくれたのだった。

システムがうまく機能していない国に暮らし、手続の苦労や理不尽さをよく知っている人独特の、ねぎらうような、連帯を示すようなフレンドリーさだった。

“クリミアからきた”という彼の言葉に思わず、ロシアとの併合がきっかけでこっちへ?と聞いてしまう。

彼は、うーんそれもあるけど、もともと“西”へ来たかったんだ、と言う。

スロバキアはどう? 住みやすい? と尋ねると、

彼は、スロバキアに来れて本当に良かったと、心底嬉しそうに話した。あそこにいたら、何もできない、将来がない、でもここは選ぶ自由がある、と。 

彼の様子から、開放感、という言葉が浮かんだ。

生まれ故郷に見切りをつける気持ちも、私にとって未知のものだと思った。

 

スロバキアに留学中、課題でスロバキア民話の挿画をやって以来、民話にとても興味が湧き、暇を見つけては民話の本を読んでいる。
民話のストーリーは、話の辻褄が合っていないようでも、妙な説得力があって、話の骨太さを感じる。
ウクライナ民話も家に数冊あって、動物が出てくるお話が、特に生き生きとしていて可愛いと思う。日本でも「てぶくろ」や「セルコ」など訳されている。 

私が再話、絵を描いた絵本「きつねどん」も、ハンガリー民話ではあるが、採集された地域はウクライナの西部、ウジュホロドのあたり。 

 

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